研究概要 |
家兎の脛骨骨髄よりmarrow stromal cellを分離しその性質を調べた結果,CD44+/CD14-であり,また鋭敏なresin-TRAP assayによる解析で低レベルであるがtelomerase活性が認められたことから,分離した細胞はmesenchymal stem cell (MSC)としての性格を有するものであった.このMSCをin vitroで特定の分化条件下で培養増殖させ,そこへCMV promoter下に繋いだCartilage derived morphogenetic protein (CDMP-1/Gdf-5)遺伝子を導入した結果,CDMP-1遺伝子発現が導入後1日目より認められ,少なくとも3週間以上の期間は発現が持続していた.CDMP-1による軟骨分化の促進作用は極く軽微であり,組織学的にmetachromatic matrixの軽度の増大とアグリカン遺伝子発現の軽度の増加を認めるのみであった,しかし培養期間中に細胞数の増大が有意に認められ,CDMP-1はMSCに対してtrophicな効果を示すと考えられた.そこで引き続いて家兎膝関節の軟骨全層欠損モデルへのCDMP-1遺伝子導入自家MSC移植による軟骨修復実験を行った.総計68羽の白色家兎を用い,膝大腿骨顆間部関節面に既に報告確立した方法で軟骨欠損を作成し,ここに予めそれぞれの兎より採取し増殖させたMSCをコラーゲンゲル内に包埋したもの,またはこれにCDMP-1遺伝子導入したものを移植し,経時的に関節軟骨修復を検討した.まず修復組織内の細胞は移植MSC由来であることを抗GFP抗体で確認した.MSC移植により術後2週目までに良好な修復が開始され,8週に至るまでにさらに良好な修復結果を得た.また修復組織は硝子軟骨よりなるものが多く,豊富なマトリックス蓄積を示し,抗II型コラーゲン抗体でも高い染色性を示した.右膝にCDMP-1遺伝子導入MSC,左膝にコントロールMSCを自家移植したが,右膝の方で明らかに良好な軟骨の修復再生を認めた,組織学的スコアでも同様で,これらの結果からCDMP-1遺伝子導入がMSCの増殖維持に働き,in vivoではそれが軟骨修復にも資することが明らかとなった.
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