これまでに、我々はSAMP6のlow peak bone massに連鎖するQTLが第11、13、X各染色体に存在することを示した。今回、polygene系の遺伝形式であるSAMのシステムをsingle gene系の遺伝形式に変換するために、各々の染色体について変異のあるQTLを一つずつ持つcongenic mouse各系統の作製を試みた。SAMP2とSAMP6を、QTL領域の3つのマーカー(約20cMのinterval)による選択を行いながら、連続7回戻し交配して、第11、13、X各染色体で一つのQTLを含むSAMP2のbackgroundをもつ系統、SAMP6のbackgroundをもつ系統の2系統、合計6系統を作製する予定で実験を開始した。高骨量系のSAMP2または低骨量系のSAMP6を連続7回戻し交配することによりcongenic mouseを作製し、第11、13、X各染色体で一つのSAMP6のintervalを持ちbackgroundがSAMP2である系統を各々P2.P6-pbd1^a、P2.P6-pbd2^a、P2.P6-pbd3^aとし、逆にSAMP2のintervalを持ちbackgroundがSAMP6である系統を各々P6.P2-pbd1^b、P6.P2-pbd2^b、P6.P2-pbd3^bと名付けた。backgroundにcontaminationのないことを確認し、当該染色体のgenotypingおよびMD(microdensitometry)、DEXA(dual energy X-ray absorptiometry)、pQCT(peripheral quantitative computed tomography)にて骨密度測定を行った。P2.P6-pbd1^a、P2.P6-pbd2^aではSAMP6のintervalが各々48cM、15cM挿入されており、background系統であるSAMP2より有意に低骨密度であった。また、P6.P2-pbd1^b、P6.P2-pbd2^bではSAMP2のintervalが各々32cM、15cM挿入されており、background系統であるSAMP6より有意に高骨密度であった。特にP6.P2-pbd2^bでは、DEXAで測定した全身骨密度もSAMP6より有意に高値であり、第13染色体ではQTLの効果は全身性であることが示唆された。これらの結果から原因遺伝子が第11及び13染色体のQTL上に存在することが証明された。他の系統は個体数が揃い次第、骨密度測定を開始する。また、SAMは、現在13系統からなるrecombinant-like inbred strainであるが、最低骨量系統であるSAMP6は第11染色体で他の系統と異なった特異的なマイクロサテライトマーカーハプロタイプを示し、mutationの存在の可能性がが示唆された。また、最大の骨量系統であるSAMP1、SAMP2、SAMP8は第13染色体上で、同一のハプロタイプを示し、高骨量と関係する多型の存在の可能性を示唆し、congenic mouseの結果を裏付けた。
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