研究概要 |
1,軟骨全層欠損モデル兎の作成方法の検討 家兎大腿骨の軟骨全層欠損モデルを確立した.直径2.5mm,深さ3mm軟骨全層欠損は正常な関節軟骨で修復され,直径5.0mm,深さ3mm軟骨全層欠損では線維組織で不完全に置換された.ゲル包埋軟骨細胞移植群では硝子軟骨様組織で修復されたが,ゲル担体のみ移植群では徐々に変性し,線維様組織となり軟骨基質の染色性が認められなくなった. 2,遺伝子発現研究用プローブ,プライマーの作成 マウスやラットの遺伝子塩基配列を基にPCRプライマーを作成し,RT-PCRによってcDNA断片を増幅して,家兎実験用にType II collagen, Aggrecan, TGF-beta, c-fosの遺伝子をクローニングし,プローブを作作成した. 3,ラット胎児軟骨損傷におけるc-fos遺伝子の発現 胎児,成人ラットの膝関節に半層軟骨損傷を作製しRT-PCRを用いて創傷治癒の早期発現遺伝子であるc-fosのmRNAの時間的発現,in situ hybridization(ISH)を用いて空間的発現を比較,検討し成人と比較し胎児のc-fos遺伝子の発現は軟骨損傷の修復に関与している可能性を明らかにした. 4,ラット関節軟骨におけるThioredoxin(TRX)の発現 ラット膝関節軟骨におけるTRX mRNAの発現と,軟骨損傷におけるTRXの発現の変化について検討した.関節軟骨細胞においてはTRX遺伝子は関節に面する表層の細胞に深層より強い発現を認めたことより,表層の軟骨細胞ほどより強い酸化ストレスに曝されており,軟骨細胞も酸化ストレスに対する防御機構を備えていると考えらた.また損傷周囲の軟骨細胞により強い発現を認めたことから,TRXは軟骨損傷に対するストレス応答の一つとして働いている可能性があることを明らかにした.
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