不動・非荷重状態では、骨量は急速に失われる。この急速な骨量減少は、p53遺伝子シグナルが亢進することによる骨髄細胞の分化・増殖異常であるという仮説をたてた。この仮説を検証する目的で、8週齢の雄性、p53遺伝子欠損マウス(-/-)と野生型マウス(+/+)を用いて、尾部懸垂を行い、両者を比較した。スタート時と非荷重後1週で屠殺し、脛骨を採取した。 脛骨の海綿骨量は、p53(+/+)では、非荷重後1週でスタート時の45%に有意に低下した。 (-/-)では、非荷重後1週で減少しなかった。骨形成率は、p53(+/+)では、非荷重後1週で有意に低下するのに対して、(-/-)では、減少しなかった。石灰化遅延時間は、p53(+/+)では、非荷重後有意に長くなっていた。TUNEL染色で、アポトーシスを検出した結果、p53(+/+)では、非荷重後、骨髄間質細胞が陽性に染まっていた。(-/-)では、変化がなかった。脛骨から骨髄細胞を採取し、細胞培養を行った。ALP陽性CFU-f及びmineralized noduleの形成は、p53(+/+)では、尾部懸垂後1週で有意に低下するのに対して、(-/-)では、低下しなかった。定量的RT-PCRでは、p53(+/+)では、非荷重1週で、p53およびその下流のp21のmRNAの発現が亢進していた。(-/-)では、p53とp21のmRNAの発現は認められなかった。核染色後のフローサイトメトリーの結果、p53(+/+)では、非荷重後hypoploidyが増加していた。 非荷重による骨量減少には、p53遺伝子シグナルを介した骨髄細胞の分化異常が関与している。
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