研究概要 |
ラット遊離肺環流標本を作製、5%炭酸ガス加空気にて換気を行っている条件下で左右肺動脈を分離、左右肺動脈を個別に閉塞できるモデルを作成した。環流は、Krebs-Henseleit solutionに4%でbovine serum albuminを加えて0.04ml/g body weight/minの流量にて行った。このモデルで、左右肺を換気下に、左肺を一定時間虚血にさらしてより再環流することにより、左肺に肺水腫が発生することから、左肺は低酸素症により肺水腫をきたすのでないことを明らかにした。左肺の虚血・再環流による肺水腫の原因を明らかにするために、再環流後一定時間経過後に肺組織の一部を採取、RT-PCRにてサイトカインmRNAの検出を行うことを今年度の主目的とした。本モデルでは、左右肺が同一温度、換気下におかれているため、右肺を内部コントロールとして用いることができ、実験条件に影響されやすいmRNAの発現を厳密に検討できることが特徴である。 左肺を虚血100分後、両肺環流として、再環流5,10,15,20,25,30分にて左、右肺の一部を採取、残り肺でwet/dry ratioを求めて虚血にて肺水腫が発生することを確認した。採取した肺サンプルから直ちにRNA-witzerを用いてRNAを抽出、分光光度計にてRNA量を測定、左右肺からのRNAを同量にそろえた。 IL-1β,IL-6,IL-10,TNF-αのPCR primerを使用して、至適条件の温度、cycling timeを求めてRT-PCRを行った。このサンプルを電気泳動にて分離したところ、コントロールのGAPDH mRNAには差がみられず、IL-1β,IL-6mRNAは、左肺にのみ虚血100分後、再環流5,10,15分で発現した。 左肺は虚血にさらされているが右肺と同じガスで換気されており、肺胞からの酸素化により虚血肺は低酸素におちいっていない肺組織に特異的な病態で、好炎症性サイトカインmRNAが発現し、肺水腫をきたす病態と密接に関係していることを示唆した。
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