研究概要 |
ラット遊離環流肺標本において、左右肺動脈を周囲組織から剥離、左右肺動脈を個別に遮断できるモデルを作製した。我々の仮説は、虚血により、虚血肺に好炎症性サイトカインが強く発現し、虚血・再環流障害の原因となるである。このモデルにおいて5%炭酸ガス加空気にて両肺を換気下に60-100分左肺の環流を遮断した後(環流は4%bovine serum albumin加Kerbs-Henseleit solutionで0.04ml/gram body weight)、左右肺から個別に再環流を0-20分おいてより100mg前後の組織を数ヶ所より採取した。この肺組織よりChomczzynski and Sacchiの方法によりtotal RNAを抽出、MPCR primerを用いてTNF-α,IL-1β,IL-6,IL-10,Interferon-γを各サイトカインの至適温度とサイクル数でRT-PCRを行い、合成されたDNAをagarose gel中で電気泳動、cthidium bromideで発色させて検出した。その結果は、TNF-α,IL-1β,IL-6は同様な発現を示した。すなわち、左肺虚血60〜100分の虚血、再環流0〜20分で、右肺に左肺と同程度かより強く発現した。この傾向は虚血・再環流時間で変動しなかった。IL-10では、虚血・再環流により左肺に強く発現し、Interferon-gは一定の傾向を示さなかった。環流を受けていた右肺に好炎症性サイトカインが強く発現した原因は、環流液中のbovine serum albuminがstandard品であるため、endotoxinを含んでいることに起因すると想定された。左右肺に好炎症性サイトカインが発現しながら、左肺に虚血・再環流障害が生じることは、好炎症性サイトカインにより誘導された因子と、酸素供給が充分あることにより産生されたoxygen radicalが反応して細胞膜を傷害し肺水腫を形成する機構を示唆した。
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