吸入麻酔薬は心筋の虚血-再灌流障害に対し保護的に作用すると報告されている。吸入麻酔薬は虚血-再灌流障害時の心筋細胞内アシドーシスを抑制することにより、虚血-再灌流障害を軽減する可能性が予想される。心筋細胞内のpH調節はNa+/H+交換系、H+-HCO3-共同交換系など少なくとも3系統の調節系で調節されているが、吸入麻酔薬が細胞内pH調節系への作用を検討した報告は未だ無い。そこで、平成11年度は虚血再灌流状態での細胞内pHの変化を蛍光色素法を用いて検討した。ウサギ心臓よりの単離心筋細胞を使用し、虚血再灌流モデルは化学的無酸素化としsodium cyanide(NaCN)を含むglucose無添加灌流液と通常の灌流液による再酸素化にて作製した。細胞内pHの変化は、pH感受性蛍光色素(BCECF)を使用して測定した。吸入麻酔薬の投与により虚血再灌流中のアシドーシスは抑制された。Na+/H+交換抑制剤amilorideを前投与しても吸入麻酔薬によるアシドーシスの抑制の程度は変化しなかった。以上から、吸入麻酔薬は再灌流障害時のアシドーシスを軽度抑制することが示された。吸入麻酔薬は主にNa+/H+交換系を抑制することが示唆された。
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