本年度は肝細胞を用いて、アポトーシスを誘導し、アポトーシスの有無と活性酸素との関係について調べた。 (方法) 1.ラット肝臓をコラゲナ-ゼ処理して肝細胞を抽出し、インスリンを加えてインキュベ-タ内で12時間培養した。 2.12時間後、肝細胞にアポトーシスを誘導するため、抗Fas抗体(CH-11)、腫瘍壊死因子(TNF)ならびにリポポリ多糖類(LPS)を投与した。なお、各アポトーシシス誘導物質に対する感受性を高めるため、蛋白合成阻害剤シクロヘキサミド(CHX)、転写阻害剤アクチノマイシンD(ActD)、ならびに同じく転写阻害剤ガラクトサミン(GalN)をそれぞれ同時に投与した。 3.24時間後にトリプシナイズにより細胞を回収し、アポトーシスに伴うDNAの断片化の定量的評価、細胞死の程度、活性酸素発生の程度ならびにアポトーシスの実行因子であるカスパーゼの活性化の程度を調べた。DNAの断片化は蛍光色素ヨウ化プロピジウム(PI)を用いて、フローサイトメーターにて測定した。細胞死の程度はミトコンドリア活性をみるMTT活性により測定した。活性酸素発生は、過酸化物に反応して蛍光を発する色素DCFH-DAを用いて、フロ-サイトメ-タ-にて測定した。カスパーゼの活性化はイムノブロッティング法にて調べた。 (結果) 1.抗Fas抗体(CH-11)と蛋白合成阻害剤シクロヘキサミド(CHX)の組み合わせが、最も効率よく、DNAの断片化ならびにMTT活性の低下をもたらした。 2.DCFH-DAを用いた活性酸素発生の有無ならびにイムノブロッティング法を用いたカスパーゼの活性化は検出できなかった。
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