研究概要 |
本年度は家兎脊髄虚血モデルで15分間虚血・再灌流後の遅発性後肢運動機能低下の発生機序とアポトーシスおよびグリア細胞との関連を調べた。再灌流8,24,48時間後の後肢運動機能を評価し、組織を灌流固定あるいは凍結摘出した。TUNEL染色とアガロース電気泳動法によるDNA分析でアポトーシス発生を評価した。Nauta染色で軸索損傷を評価した。脊髄細胞傷害の指標にα-fodrin分解産物を免疫ブロット法で測定した。運動機能低下の重症化とα-fodrin分解産物の量が相関した。TUNEL染色では神経細胞脱落を認めた例で陽性細胞を認めたが、電気泳動ではDNA梯子状分断は認めなかった。Nauta染色で軸索傷害が明らかになった。以上から、遅発性後肢運動機能低下とアポトーシスは関連がないと考えられた。さらに、神経細胞死とグリア細胞の役割をみるため、再灌流4,12時間後の灌流固定標本を加え、グリア細胞の活動変化を調べた。組織障害の評価にHE染色を行い、免疫組織化学的に抗GFAP抗体によるアストロサイトの認識、抗RAM-11抗体によるミクログリアの認識を行った。後肢運動機能低下を認めた家兎では、再灌流後4時間で神経細胞の変性・壊死を認め、48時間後以降の標本ではこれらの変性細胞は認められなかった。再灌流後24時間から神経細胞の脱落、肥満星状膠細胞とグリア瘢痕を認めた。GFAP陽性細胞の増加は再灌流4時間以降にみられ、RAM-11陽性細胞は8時間で出現し、以後増加した。以上より、変性神経細胞は再灌流後4時間に出現し、炎症性反応としてアストロサイトが増加する一方、マクロファージ型ミクログリアにより再灌流後8時間以降48時間以内に変性細胞が脱落すると考えられた。今後、染色方法を工夫し、再灌流後12時間以前の脊髄神経細胞の変性過程におけるミクログリアの役割を検討する予定である。
|