研究概要 |
目的:軽度低体温併用の体外式心肺補助(extracorporeal lung and heart assist,ECLHA)の蘇生効果を心停止モデル動物で評価した。方法:犬(n=14)を常温,浅麻酔,空気呼吸の状態で電気的に心室細動を誘発して15分間心停止とした。その後低体温群(33℃,7匹)と常温群(37.5℃,7匹)に分け,頸静脈から脱血し,頸動脈へ送血するV-AバイパスECLHAを24時間実施した。ヘパリン結合の膜型人工肺と体外循環回路を用い,activated coagulation timeを120秒前後に維持した。低体温群はECLHAスタート直後に低体温を導入し,蘇生開始後20時間低体温を維持した。自己心による血行動態維持が可能となればECLHAを離脱した。さらにその後72h時間観察した。死亡率,catecholamine使用量,気管内チューブ抜管までの時間,神経学的障害点数(NDS,%),壊死心筋重量等を両群で比較検討した。結果:死亡率は常温群57%,低体温群14%(P<0.01)であった。Catecholamineの使用量は常温群で低体温群より有意に多かった(P<0.05)。心筋壊死部重量は常温群14.5g,低体温群4.2gであった。抜管するまでの時間は常温群で長かった。NDSは常温群60.5%(n=2),低体温群29.8%(n=6)であった。常温群では救命例が少なくNDSの厳密な比較は困難であったけれども,低体温群の救命例では,後肢の運動障害で立てないだけで,意識はあり経口摂取もでき正常の犬と変わりないほどに回復し,昏睡状態の常温群と比べ明らかに中枢神経系ならび全身状態は良好であった。結論:15分間の心停止動物をECLHAと軽度低体温で蘇生すると,常温のECLHAと比べ救命率が高く神経学的後遺症は少なかった。
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