研究概要 |
本研究の目的は,膜型人工肺と部分体外循環による体外式心肺補助(extracorporeal lung and heart assist,ECLHA)と軽度低体温併用による心肺脳蘇生法の有用性を,心肺停止動物モデル(イヌ)で実証することである。 心停止モデルの条件を一定にするため,極力麻酔から覚醒した状態で,空気呼吸かつ常温下に電気的に心室細動を誘発して15分間の心停止を作成した。覚醒状態のイヌで心室細動を誘発すると,高度の交感神経興奮状態と血液過凝固状態を生じるため,本心停止モデルでは心停止誘発前にヘパリンの全身投与が不可欠であった。 以上の予備的研究後に,15匹の雑種成犬で心室細動を誘発し15分間の心停止モデルを作成した。心停止のイヌを,常温ECLHA群(n=8)と,低体温ECLHA群(33℃,20時間,n=7)に分けて蘇生し,96時間経過を観察して,心臓と脳の組織学的変化,生存率,神経学的欠損スコア(neurologic deficit score,NDS)を両群で比較検討した。 心筋梗塞部の重量は,常温ECLHA群14.5±3.5g,低体温ECLHA群4.2±1.3g,脳の組織検査では,常温ECLHA群の海馬CA1領域の錐体細胞の高度の変性脱落を生じたけれども,低体温ECLHA群の錐体細胞はほぼ正常で,低体温ECLHA群は常温ECLHA群に比べ,脳と心臓の保護ならびに回復に有効であった。 結論:両群の救命率(常温ECLHA群:8例中2例生存,低体温ECLHA:7例中6例生存)とNDS(常温ECLHA群:生存例2例とも昏睡状態の60.5±4.9%,低体温ECLHA群:29.8±2.5%)にも有意の差を認め,軽度低体温併用のECLHAは心肺脳蘇生に最も有効な方法である。
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