研究概要 |
周術期における血漿マグネシウムイオン(Mg^<2+>)濃度の推移,低Mg^<2+>血症の成因,生体へ及ぼす影響について臨床研究および動物を用いた基礎研究から検討した. 1.臨床研究:【方法】予定手術患者の周術期における血漿Mg^<2+>濃度を経時的に測定し,他の因子との関連についても検討した.【結果】血漿Mg^<2+>濃度は,心臓手術症例では体外循環開始後有意に低下し,その後一時的に上昇したものの,手術終了時まで低値であった.他の手術症例においても,麻酔導入直前と比較して麻酔終了直後では有意に低値であった.輸血を施行した大量出血症例,フロセミド投与例では非施行例,非投与例に比べ有意に低値を示した.手術中の輸液量と血漿Mg^<2+>濃度の低下率との間には有意な相関はなかった. 【結論】外科手術において血漿Mg^<2+>濃度は,麻酔導入時から比較して手術終了時に有意に低下した.大量輸液,体外循環,利尿薬投与は血漿Mg^<2+>濃度の低下を助長する因子であった. 2.基礎実験(1):【方法】全身麻酔下のラットに対して中心静脈カテーテルを挿入し,中心静脈栄養およびフロセミド投与を1週間施行した後,体重,血清中のMg^<2+>および他のイオン濃度を測定した.【結果】体重低下はみられなかった.血清Mg^<2+>濃度は正常よりも低値となった.他のイオン濃度に変化はなかった.【結論】本実験モデルは低Mg^<2+>血症モデルとして用いることができると考えられた. 3.基礎実験(2):基礎実験(1)で作成した低Mg^<2+>血症ラットと正常ラットにおいて,薬剤誘発性不整脈の発生閾値を現在検討している.ハロタン1MAC全身麻酔下におけるエピネフリンの不整脈誘発閾値は,低Mg^<2+>血症ラットにおいて有意に低値を示した.今後,他の薬剤誘発性不整脈についても検討する.
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