研究概要 |
研究Iではラットを用い,フロセミドの静脈内持続投与が血漿電解質濃度に及ぼす影響を検討した.ラットにフロセミド3mg・day^<-1>の静脈内持続投与を7日間施行した結果,血漿K^+およびMg^<2+>濃度は有意に低下した.本法は,低Mg血症の動物モデルの作成法となりうることが判明した. 研究IIでは,低Mg血症がハロタン-エピネフリン誘発性不整脈の発生閾値に及ぼす効果を,研究Iで作成したモデルを用いて検討した.低Mg群(n=10)および対照群(n=10)を用いた.1.5%ハロタン吸入下にエピネフリン4.0μg・kg^<-1>を投与して不整脈発生の有無を判定し,以後のエピネフリン投与量を決定した.その後,不整脈発生閾値に到達するまでエピネフリン投与量を指数関数的に増量させた.不整脈発生閾値到達時点における血漿K^+およびMg^<2+>濃度は,低Mg群が有意に低値であった.低Mg群の不整脈発生閾値は,対照群と比較して有意に低値であった(2.21vs5.05μg・kg^<-1>).不整脈発生時点における低Mg群の血漿エピネフリン濃度はcontrol群と比較して有意に低値であった(3.74vs14.02ng・ml^<-1>).フロセミド投与による低Mg^<2+>血症および低K^+血症は,ハロタン-エピネフリン誘発性不整脈の発生閾値を有意に低下させた. 研究IIIでは,体外循環を用いた心臓手術における血漿総MgおよびMg^<2+>濃度の変動とその要因を検討した.心臓手術患者8名を対象とした.血漿総MgおよびMg^<2+>濃度は体外循環開始前より有意に低下し,体外循環中に一過性の上昇を示したものの,体外循環中および離脱後を通じてコントロールと比較して有意な低値をとり続けた.ヘマトクリットは麻酔導入後より有意に低値となり,その後もコントロールと比較して有意に低値であった.尿中Mg排泄率は大動脈遮断3分後から有意に増加し,その後もコントロールと比較して有意に高い値を示した.心臓手術中の血漿総MgおよびMg^<2+>濃度の要因として,血液希釈のほかに尿中へのMgの排泄の増加が関与していることが明らかとなった.
|