研究概要 |
前立腺肥大症はアンドロゲン(A)のみならずエストロゲン(E2)が深く関与しており、肥大腺腫の70%以上は間質細胞(主に平滑筋)が占めている。当該年度ではラット、イヌ肥大症モデルおよびヒト肥大症を用いて検討した。 1)ヒト肥大症での検討:11年度科研費で購入したLaser-capture microdissection(LCM)を用いてヒト肥大症の上皮及び間質を分離した。各々のコンポーネントにおけるAR,ERα,ERβの発現をRT-PCRにより検討した。ARは上皮・間質ともにRT-PCRにより発現を認めreal-time PCRにて定量可能であった。ERはnested-PCRにより両成分において発現を確認した。 2)ラット実験モデルでの検討:オリゴプローブを用いたRapid In-situ hybridization法(ISH)で精嚢の上皮・間質におけるTGFβmRNA発現を検討し、immunohistochemical method(IHC)と比較した。去勢では上皮・間質の両領域にTGFβmRNA発現を確認し、E2投与(7日)では間質に発現を認めた。この結果はタンパク発現に類似した。対照とした前立腺腹葉のTGFβmRNAの発現は、去勢では精嚢同様に両領域で発現を確認したがE2投与では上皮・間質ともほとんど発現を認めなかった。この結果はIHC法によるタンパク発現に類似した。 3)イヌ肥大症モデルでの検討:去勢しTestosterone+Androstenedione併用投与で作製したイヌ肥大症モデルを用いて、肥大症の上皮・間質両成分の抑制を目的として合成されたDual type inhibitor,TZA-2237の検討をした。TZA-2237の高用量は前立腺肥大を有為に萎縮した。これはAromatase活性の抑制による上皮・間質の萎縮であり、5α-reductase活性はむしろ増加した。この合成薬剤は当初の目的であるDual type inhibitorにはならないが、Aromatase inhibitorとして有効であることが確認された。
|