研究概要 |
ABO血液型不適合腎移植は、術前からレシピエント血液中に存在している抗A抗B抗体の除去と産生をいかに抑制するか、すなわち感作によって獲得された自然抗体による液性拒絶反応をいかにして克服、制御するか、という免疫学の根元的な課題への大きな挑戦であり、将来的には同種移植の免疫寛容や異種移植につながるテーマでもある。 1.本研究では多勢例の詳細な臨床病理学的な検討から、現時点におけるABO血液型不適合腎移植の集大成として、英文単行本を刊行した。その内容は、ABO血液型不適合腎移植の歴史、日本における現況と成績、適応、血液型物質(抗原)と抗赤血球抗体、拒絶反応のメカニズム、免疫抑制療法,手術法、感染症の予防と治療、日本における症例統計と解析、臨床病理学的な症例検討(17例)と解説、ABO血液型不適合腎移植から得られた知見と今後の展望である。 2.腎糸球体血管内皮細胞に特異的に発現している抗原に対する抗体価と拒絶反応の関連についての研究も行った。この研究は既知の抗原体反応系が関与するABO血液型不適合腎移植から、さらに一歩進めて、臓器特異的、かつ未知の血管内皮細胞上の抗原に対する液性抗体が腎移植の拒絶反応において果たす役割に言及したもので、研究の進展が期待される。
|