研究概要 |
本研究の目的は、卵巣癌に対する制癌剤の効果を高めうる遺伝子治療法の開発を目的として、卵巣癌細胞のアポトーシス抑制シグナルを解明し、これを解除するような遺伝子治療を開発することにある。卵巣癌培養細胞のうち、OVCAR3細胞はゴナドトロピンである。LH/hCGの受容体を発現しており、hCGを添加すると、insulin-like growth factor-1(IGF-1)の発現亢進を誘導し、このIGF-1がcisplatinによるアポトーシスを抑制することを、種々のアポトーシス測定、および、hCG,IGF-1 receptor 中和抗体同時添加によるアポトーシス抑制解除により確認した。さらに、IGF-1によるアポトーシス抑制の細胞内シグナル伝達はIGF-1下流のphospahtidy1 inositol3-kinase(PI3-kinase),Aktの活性変化を伴っていることが示された。次に、アポトーシス促進因子であるBax発現に関与する細胞内シグナル伝達の解析を行った。卵巣癌組織においてアポトーシス関連蛋白およびp53の発現を免疫染色により解析すると、Bax,p53発現が臨床的な制癌剤感受性とよく相関していた。さらに、cisplatin感受性の異なる種々の卵巣癌培養細胞において、p53遺伝子異常とアポトーシス関連蛋白の発現、およびcisplatin感受性を検討すると、p53異常に基づいてBax発現が誘導されないことがcisplatin抵抗性と深く関連することが明らかとなり、Bax遺伝子の導入がこれを回復させうる可能性が示唆された。
|