研究概要 |
1)子宮内膜症の増殖・進展におけるサイトカインの役割 IL-8は好中球の走化能をもつケモカインであり,血管新生因子としても知られている.^3H-チミジンの取り込みやMTTアッセイで検討した成績から,IL-8は子宮内膜症間質細胞の増殖促進作用を有することが明らかとなった.TNFαの添加は培養間質細胞のIL-8遺伝子発現を増強し,IL-8産生を増加し,培養間質細胞の増殖を促進した.TNFαの細胞増殖促進作用は抗IL-8抗体の併用添加で中和された.したがって,子宮内膜症患者腹水中に高濃度に存在するTNFαは,活動性病変におけるIL-8の遺伝子発現と産生を誘導して本症の増殖・進展に関与することが示唆された. 2)子宮内膜症性不妊症におけるサイトカインの作用 子宮内膜症患者腹水は妊孕能低下に働くことが知られている.しかしながら,サイトカインが妊孕能を損なうか否かについては明らかでないため,IL-6が胚発生や精子運動能に及ぼす影響について検討した.B6C3F1雌マウスを過排卵処理した後,同系雄マウスと交配させ,24時間後に卵管より1細胞期胚を採取し72時間後の胚盤胞への発生率を検討した.50pg/ml以上のIL-6添加は,マウス1細胞期胚の胚盤胞への発生を濃度依存性に阻害した.ヒト正常精子をパーコール・swim upで処理したのち,RT-PCR法でIL-6受容体とgp130遺伝子発現を検討した.ヒト精子にはIL-6受容体の遺伝子発現はみられなかったが,gp130遺伝子発現が確認された.IL-6(200pg/ml)あるいはIL-6可溶性受容体(50ng/ml)の単独添加は精子の運動率を低下させなかったが,これらの併用添加は精子運動率を有意に低下した.したがって,IL-6は初期胚発生や精子運動能を阻害して本症の妊孕能低下に関与することが示唆された.
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