研究概要 |
原渕は,札幌医大耳鼻咽喉科および旭川医大耳鼻咽喉科でこれまで経験した鼻腔原発の悪性リンパ腫43例について,EBVの検出頻度,細胞型,病理組織型および臨床像を検討した.免疫組織学的に表面形質を検索したところ,35例(80%)はCD56陽性でNK/T細胞リンパ腫であることが判明した.しかし,MT1陽性でCD56陰性のT細胞型リンパ腫やB細胞リンパ腫(L26陽性)もそれぞれ10%程度存在することが示された.NK/T細胞リンパ腫では90%以上の症例にEBER1が同定され,60%以上の症例が病理組織学的に多形成の炎症性細胞浸潤を示した.肉眼的に浸潤破壊性病変を有する症例が74%を占めていたが,9例(26%)は腫瘤形成型の増殖様式を示した.浸潤破壊性病変を有する症例の全例にEBER1が同定されたのに対して,腫瘤形成型では67%の症例にしか認めなかった.腫瘤形成型では5年生存率が90%であったのに対し,著明な浸潤破壊性病変を有する症例では極めて予後不良であった.以上の結果から,鼻性NK/T細胞リンパ腫は,その発育増殖形成の違いから浸潤破壊型と腫瘤形成型の2型に分類される可能性が考えられた(第58回日本癌学会ワークショップ1,広島,1999). 青笹は,17例について表面形質と免疫遺伝子型の解析を行った.その結果,全例がCD56またはCD16陽性で,TIA抗原も検索した12例全てが陽性であった.また,EBER1は検索した15例中13例に同定された.T細胞レセプターγ鎖遺伝子の再構成をDGGE法にて解析したところ,全ての症例で再構成は認められなかったことから,本疾患はNK細胞由来である可能性が強いことを報告した(Int J Canncer81:865-70,1999).
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