調和のとれた組織リモデリングの研究 予備実験の結果、血管新生のみを抑制しても病巣の線維化が起こり視力障害が残ることが分かった。つまり、良好な視力維持のためには調和のとれた創傷治癒(リモデリング)が必要である。そこで、TGF-betaを制御して創傷治癒を改善する試みを行った。TGF-betaレセプター分泌型アデノウイルスAdCATbを製作した。これはミンク肺胞上皮細胞によるTGF-beta活性測定系でTGF-betaの活性を特異的に抑制した。AdCATbを投与すると、マウス角膜創傷治癒過程において、角膜血管新生のみならず角膜の線維化が抑制された。特に、マクロファージを中心とした炎症細胞の浸潤が著しく抑制され炎症性ケモカインのMCP-1の発現が減少しており、角膜の透明性は維持された。次に、眼内創傷治癒モデルの一つである家兎増殖性硝子体網膜症(PVR)モデルにも同様のAdCATbを投与した。すると、同様にPVRが抑制された。以上のことから、TGF-betaの過剰発現が過度の眼内線維化や血管新生を起こすことが分かったため、TGF-beta1産生抑制作用のある薬物tranilastを、家兎PVRモデルに投与して効果を見たところPVRを抑制した。以上から、調和のとれた眼内創傷治癒にはTGF-betaの制御が必要であることが分かった。 遺伝子導入の研究 硝子体切除後のアデノウイルスベクター投与を行うと神経網膜に高率に遺伝子導入可能なことが分かった。また、電気パルスで全く炎症を起こさない角膜へのnaked DNAの導入が可能であることが分かった。
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