研究概要 |
神経芽細胞腫は,退縮,分化に向かう予後良好なfavorable腫瘍と,悪性度が高く進行の早い予後不良のunfavorable腫瘍に分かれる。神経芽細胞腫(241症例の凍結組織標本)のテロメア長,テロメラーゼ活性に加え,テロメラーゼの構成成分であるhuman telomerase RNA component(hTR)、human telomerase reverse transcriptase(hTERT)、human telomerase assciated protein 1(hTEP1)発現を同一症例で検討した結果,テロメラーゼ高活性腫瘍はhTR,hTERTも高発現であったが,hTEP1はすべての腫瘍に恒常的に発現していた.テロメラーゼ低活性及び活性のない腫瘍にもhTRの低い発現をみとめ一部にhTERT高発現を認めたが,これらのhTERTはsplicing variantsであった.今回,購入した蛍光サーマルサイクラーを用いてテロメラーゼ活性,splicingのないhTERT発現の定量化を行うと,これらの発現レベルは相関しており,予後不良例で高値となった.他の腫瘍特性との関連を検討した結果,MYCN増幅,1p領域異常,NTRK1低発現と相関し,神経芽腫の診断治療に有用なBiomarkerであることが確認された.さらに,MYCN発現とhTERT発現との関連はMYCNがhTERTのプロモーター領域に作用している可能性が示唆された.テロメア長の検討では,テロメラーゼ活性,hTERT発現が極めて高い12例中10例が短縮しており,これらが高テロメラーゼ療法の適応症例であると考えられた.現在,神経芽腫細胞株12株にhTRに対するPNA,hTERTの antisense DNAを導入して継代し、継代ごとにテロメア長、テロメラーゼ活性、hTR,hTERT,hTEP1の発現の変化を検討し、増殖抑制効果の検討中である.
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