当年度は研究計画の初年度として、実験系の確立を主眼に検討を行なった。 1.マウスコロニーの確立とレチノイン酸処理マウス胎仔切片の作成:マウスC57BL/6のコロニーを確立した上で、100mg/kgのATRAを胎生9日目妊娠マウスに経口投与直腸肛門奇形を誘導した。妊娠マウスから10、11、12、13、14の各日齢にて実体顕微鏡下にマウス子宮より胎仔を採取した。その結果、実験系に供した胎仔の98%以上に直腸肛門奇形の発生を確認した。 2.ATRA処理マウス胎仔切片におけるretinoic acid receptorの蛋白質レベルでの発現の検索:採取した胎仔を直ちに4%パラホルムアルデヒド液にて12〜24時間固定し、クリオスタットにて矢状断あるいは水平断に薄切、連続凍結切片とした。ここで抗RARα、RARβ、RARγ特異抗体を用いてABC法による免疫組織化学染色を施行し胎仔の全体像のみならず消化管奇形、脊椎異常、直腸肛門奇形の病型発生をレセプターレベルで検索する系を確立した。 3.ATRA処理マウス胎仔におけるRARα、RARβ、RARγ geneの発現と検索:In situ hybridizationを用いた遺伝子レベルでの検索を行なうため、次の実験段階としてRARに対するprobeの調整に入った。即ち、各特異配列を含むcDNA(Genbank assession number X56572(RARα)、X56569(RARβ)、M34476(RARγ))をSP6/T7/T3 promotorを有するpGEMベクタープラスミドにサブクローニングし、antisense probe、sense probeの双方をdigoxygenin標識する準備を開始した。
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