研究概要 |
直腸肛門奇形マウスにおけるレチノイン酸ならびに特異的レセプターの発現病態の解析結果に基づき、骨盤底筋群の発生に関する解析を、奇形誘発マウス胎仔を用いた連続組織切片を用いて行った。レチノイン酸処理マウス胎仔の作成と子宮からの摘出C57BL/6系マウスを交配させ膣栓の存在をもって妊娠を確認し、胎生9.0日目に100mg/kgのall trans-retinoic acid (ATRA)を経口投与、各系の妊娠マウス子宮から胎生9.5〜16.0の各日齢にて、実体顕微鏡下(Nikon model SMZ-U,×20〜75)にmicro-manipulatorを用いて胎仔を採取した。先天性鎖肛モデルマウス胎仔における筋組織、筋分化誘導因子(MRFs)及び神経・筋接合部の発生動態の解析を行った。採取した胎仔を直ちに4%paraformaldehyde溶液にて固定し、液化窒素にて凍結させクリオスタットにて矢状断ないし水平断にて薄切、連続切片とした。抗RARα、RARβ、RARγ特異抗体を用いた免疫組織化学的検討では胎仔の消化管奇形、脊椎異常、直腸肛門奇形の病型発生をレセプターレベルで検索する系を確立し、RARα、RARβ、RARγ geneの発現では特にRARαにおけるhind-gutないしtail-gut領域での発現の変異ならびに病態が明らかになった。さらに、本症における直腸肛門機能障害に強い相関を有する骨盤底筋群の発生について、今回確立した実験系を用いて検討した。筋細胞系の発生に関するマーカーとして抗α-isoactin、desmin、myosin heavy chainの各抗体、筋分化誘導転写因子(myoD, MRF4,Myf5,myogenin)および神経・筋接合部の形成に関与する分子(synaptophysin, agrin等)に対する各特異抗体を用いて酵素抗体法にて分子発生形態学的検索を行った。その結果、確立した直腸肛門奇形マウス実験系において、レチノイン酸の参加する胎生期シグナル伝達系とその病態が、本症における括約筋群ならびに神経筋接合部の発生障害に強く関与している状況が明らかになった。
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