1 ケロイド由来線維芽細胞において各種増殖因子刺激に対するシグナル伝達因子(ERK、JNK、p38)のリン酸化を調べた。ケロイド由来線維芽細胞においてはTGF-β1+EGFの併用刺激によるERKの強いリン酸化が認められるとともにJNKおよびp38に関しては恒常的リン酸化が認められた。 また、各種増殖因子刺激下でトラニラスト添加群と非添加群におけるMAPキナーゼのリン酸化を調べ、トラニラスト添加によるMAPキナーゼリン酸化抑制作用を見出した。このことから増殖因子による細胞外刺激に対して正常、肥厚性瘢痕、ケロイド間には細胞内シグナル伝達に大きな違いが存在することが明らかになった。 2 抗Fas抗体を用い、アポトーシスを誘導したところケロイド由来線維芽細胞は有意に耐性を示した。また、その原因がcaspase cascadeより上流での抑制因子の存在であることを証明した。さらに、ケロイド由来線維芽細胞の内因性TGF-β1がアポトーシス抑制に重要な働きをすることを明らかにした。これはケロイド治療法確立に大きく貢献する重要な知見である。今後、ケロイド由来線維芽細胞における内因性TGF-β1をin vivoにおいてどのようにコントロールするかが課題である。 さらに、今後、多岐にわたるアポトーシスの一次情報の異常や細胞内の情報のカスケード内での異常、また、細胞増殖・分化を伝達するシグナル系とのクロストークを調べることで多面的なケロイド治療の確立に貢献するものと思われる。
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