研究概要 |
1 RT-PCR法を用いて口腔病におけるbcl-2とbaxのmRNAの発現量の相対値bcl-2/bax mRNAを求め免疫組織学的な発現および扁平上皮癌の分化度の相同性について検討した。その結果bcl-2のmRNAおよび免疫組織学的な発現は分化の悪い癌ほど強く、またbcl-2/bax mRNAの値は低分化癌ほど高かった。 (J Oral Pathol Med 2000:29:63-9) 2 扁平上皮癌80例、白板症26例、白板症中の初期癌10例を用い、TGF-β1、TGF-βRI、TGF-βRIIについて免疫組織化学、免疫電顕学的検索を行った。浸潤癌のTGF-β1は白板症および初期癌よりも強くみられた。一方、浸潤癌のTGF-βRI、TGF-βRIIは白板症と比べると、著明に減少した。初期癌ではTGF-β1の増加は認められなかったが、TGF-βRI、TGF-βRIIの減少がみられた。(Oral Med Pathol.4:55-61,1999.) 3 日本人のもつウイルス関連胃癌におけるEB-ウイルスのLMp2A遺伝子の発現とエクソン2.6.のシークエンス解析を行った。その結果塩基配列の突然変異が10個にみられ、そのアミノ酸レベルの変異は3つあった。特にコドン3と8の突然変異はセリンをスレオニンに変えるもので、これはEBVに特異的な細胞傷害性Tリンパ球結合エピトーブに関するものであった。(Virus Genes 19:2,103-111,1999) 4 ヒトパピローマウイルス(HPV)が口腔疾患にどのぐらい関与しているかを知るために111例の検体についてSouthernプロットハイブリダイゼーション、PCR法でL1C1/L1C2とL1C/L1C2mプライマーを用いて検討した。病変は扁平上皮癌30例、白板症34例、乳頭腫9例、線維性ポリープ6例、エプーリス6例、正常は14例である。HPVは扁平上皮癌19.4%、白板症では20.6%であり、タイプとしては18型か88.5%で最も多く、またこれまで口腔病変では知られていない70型が新たに発見された。(Oral Med Pathol 1999;4:17-23) 口腔の尋常性疾病からは始めてHPV-2型の分離をすることが出来た。(J Oral Pathol Med 1999;28:137-40) 5 病理組織像を中心としてヨード色素検査法による診断的価値について30症例を検討を行った。結果としてはヨードによる染色では黄褐色、黄白色、不染と色調で3段階に分けて分布図をつくった。一方病理組織学的検索では上皮の異型性は、軽度、中程度、高度、上皮内癌、早期癌、浸潤癌と分けた。また上皮の角化度、上皮の厚さ、炎症性細胞浸潤などの所見についても比較検討を行った。ヨード染色性とPAS染色による上皮細胞のグリコーゲン量の比較も行った。これらをもとにヨード染色性の臨床上での使用の可能性の限界について検討した。(第9回日本口腔粘膜学会にて発表)
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