研究概要 |
器官形成の上皮間葉相互作用に関わっている因子として注目されるBMPファミリーが歯胚分化過程のいかなる局面で発現しているかをin situ hybridization法を用いて検索を行った。 BMP-2,4,3,5,6,7それぞれに特異的なディゴキシゲニン標識cRNAプローブを作製し、胎生11日から生後1日までのマウス歯胚に対して非放射性in situ hybridization法を行った。胎生11日にすでに発現の認められたのはBMP-4および7であり、胎生12日になるとBMP-2の発現も認められた。これらはその後生後1日まで常に発現を認め、発現部位は主に上皮と間葉が接する領域であった。このことから、BMP-2,4,7は歯牙発生の初期から上皮間葉相互作用による形態形成および細胞分化に関与していると考えられた。それに対して、BMP-5の発現が初めて観察されたのは胎生17日で発現部位は帽伏期後期の内エナメル上皮細胞であった。BMP-5はエナメル質あるいは象牙質形成に対し重要な役割を演じている可能性が考えられた。BMP-3は帽伏期から鐘状期にかけての歯小嚢という他のBMPと全く異なる領域に発現しており、歯胚の外形の決定に何らかの関与をしているのかもしれない。BMP-6は観察期間を通して明らかな発現を認めることができなかった。 今後これらの結果を基礎データとして、アンチセンスオリゴヌクレオチドを用いた培養歯胚における翻訳阻害実験を行い、各BMPの機能をさらに追求していく予定である。
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