研究概要 |
歯胚発育における基質蛋白遺伝子の発現を胎生17.5日,生後0日,生後2.5日生後8日マウスにおいて経時的に観察した結果,I型コラーゲンmRNAのシグナルは、胎生17.5日から、成長端differentiating papilla cellから切端部osteodentinまで、odontoblastの細胞分化のすべてのステージにおいて認められた。オステオネクチンmRNAのシグナルも、胎生17.5日から、同様に認められた。オステオポンチンmRNAのシグナルは、胎生17.5日下顎切歯において、pre-odontoblastやyoung odontoblastに周期的に認められ、osteodentinのodontoblastにも認められたが、生後0日、生後2.5日では減少し、舌側の一部odontoblastとosteodentinに弱く認められるのみとなった。オステオカルシンmRNAのシグナルは、観察したすべての日齢において、pre-odontoblastから切端部osteodentinまでの細胞分化のすべてのステージにおいて認められた。DSPPmRNAのシグナルは、観察したすべての日齢において、pre-odontoblastから切端部osteodentinまでの細胞分化のすべてのステージにおいて認められた。また、pre-ameloblastにも限局的に認められた。アメロゲニンmRNAのシグナルは、観察したすべての日齢において、pre-ameloblastからsecretory ameloblastに連続して認められた。次に器官形成の上皮間葉相互作用に関わる因子として注目されているBMPファミリーが,歯胚分化過程のいかなる時期で発現しているかをin situ hybridizadon法を用いて検索した。BMP-2,3,4,5,6,7のそれぞれに特異的なディゴキシゲニン標識cRNAプローブを作製し,胎生11日から生後1日までのマウス歯胚に対して非放射性in situ hybridization法を行った。胎生11日にすでに発現が見られたのはBMP-4および7であり,胎生12日になるとBMP-2の発現も見られた。これらの蛋白を免疫組織化学的に検索した結果ほほ遺伝子発現領域に一致した分布を示した。BMP-2,4,7は歯牙発生の初期から上皮間葉相互作用による形態形成および細胞分化に関与すると考えられた。BMP-5は胎生17日の帽状期後期の内エナメル上皮でその発現が観察され,エナメル質あるいは象牙質形成に重要な役割を果たしている可能性が考えられた。一方,歯胚基底膜の主要構成成分であるIV型コラーゲンのα1からα6までの6種類のα鎖の歯牙発生過程での局在と消長を免疫組織学的に観察した結果、歯胚上皮基底膜にα鎖の部位および時期特異的な局在と組み合わせが存在することが明らかになった。これらの結果は基底膜と成長因子の共同作用が初期歯胚形態形成、細胞分化に関与している可能性を示唆している。歯胚発育過程において,BMPと密接な関連を有するcbfa1の関与について検索を行った。その結果,Cbfa1ノックアウトマウスにおける臼歯の歯胚発育は、組織学的には帽状期で停止していたが,切歯では基質蛋白の遺伝子発現の面からは象牙芽細胞およびエナメル芽細胞にまで分化しており,臼歯とは異なるシグナル伝達系が存在する可能性が考えられた。
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