研究概要 |
歯周組織の恒常性維持や組織再生に重要な役割を有する歯周靱帯における細胞分化増殖機構を解明するため,本年度はまず歯周靭帯に存在する細胞のheterogeneityを明らかにするとともに,歯周靭帯細胞のクローニング法を検討した.その結果, 1.8週齢Lewis系雄性ラットの抜去臼歯に付着する歯周靱帯から,0.2%コラゲナーゼと0.25%トリプシンの混合液による連続処理によって,歯周靭帯細からregional cell populationを得る方法を確立した. 2.連続酵素消化法によって分画された細胞群間で,細胞増殖能や石灰化能に差があり,増殖能の高い細胞はPDL中央側に,石灰化能の高い細胞は歯根表面近くに存在することが明らかとなった. 3.歯根表面に接して高い増殖能と石灰化能を兼ね備えた細胞群が存在することが明らかにされた. 4.細胞の不死化(株化)の試みとして,温度感受性SV-40ならびにテロメラーゼ関連因子であるhTERTの導入をヒトセメント質形成線維腫から得られた細胞に行ない,ペニシリンキャップ法でクローンを採取して検討したところ,研究期間内にparentの細胞やSV-40のみを導入した群では細胞増殖が停止したのに対し,SV-40tとhTERTを導入したものでは,継代数70をこえても未だ旺盛な増殖を示すクローンが複数得られた. 次年度はセメント質形成線維腫から得られたこれらのクローンのcharacterizationをラッ行うとともに,げっ歯類やヒト歯周靱帯からの分化段階の異なるセメント芽細胞/歯周靱帯細胞の株化を検討したい.
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