研究概要 |
歯周組織の恒常性維持や再生に歯周靭帯が重要な役割を演じることから,歯周靭帯における細胞の分化増殖制御機構の解明が新しい歯科組織再生療法の開発に必要不可欠と考えられる.しかし,歯周靭帯における細胞分化増殖機構の解明に不可欠な歯周靭帯細胞やセメント芽細胞の標準化された細胞株はなく,歯周靭帯における未分化な間葉細胞からに至る細胞分化や増殖の機構は未だ十分解明されていない.そこで,本研究ではセメント芽細胞,前セメント芽細胞,歯周靭帯線維芽細胞,未分化間葉系細胞などの分化段階の異なる歯周靭帯構成細胞のクローニングを行ない,歯周靭帯における細胞分化や増殖の機構を解明するための細胞株を樹立することを目的として検討を進めている. 本年度は昨年度にクローニングしたヒトセメント質形成線維腫からの細胞を中心に検討を進めた結果以下の成果が得られた. 1.温度感受性SV40T-AgとhTERTの遺伝子導入にて得られたヒトセメント質形成線維腫からの細胞クローンを引き続き継代した結果,継代数250を超える不死化細胞クローンを得ることに成功した. 2.上記の細胞クローンに,39Cのnon-permissiveな温度で発現の低下を示すT-Agの発現が認められると同時に,telomerase活性のあることを確認した. 3.上記の細胞クローンには,39Cのnon-permissiveな温度で,type I collagen, osteopontin,osteocalcin, bone sialoproteinといった石灰化関連蛋白の発現があることを確認するとともに,ascorbic acid, b-glycerophosphate, dexamethasone添加条件で明らかな石灰化が生じることを認めた.
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