神経ペプチド、サブスタンスPによる骨代謝調節機構の解明

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11470379
• 研究機関: 九州歯科大学
• 研究代表者: 後藤 哲哉 九州歯科大学, 歯学部, 助教授 (70253458)
• 研究分担者: 田中 輝男 九州大学, 歯学研究院, 教授 (60077667) ; 中牟田 信明 九州歯科大学, 歯学部, 助手 (00305822) ; 小林 繁 九州歯科大学, 歯学部, 教授 (10118078)
• キーワード: substance P / neurokinin-1 receptor / 破骨細胞 / 骨芽細胞 / 骨形成 / 骨吸収 / tachykinin / RT-PCR

研究概要

骨芽細胞におけるneurokinin-1 receptor (NK1-R)の遺伝子発現をラット骨芽細胞様細胞Rosとラット頭頂骨由来骨芽細胞で調べた結果、Rosおよび培養初期(培養4日目)の骨芽細胞にはNK1-Rの発現が認められなかったのに対し、骨形成期(培養10日目)の骨芽細胞にはNK1-Rの発現が認められた。この結果は培養初期の骨芽細胞にsubstance P (SP)を加えても影響がなかったのに対し、骨形成期の骨芽細胞にSPを加えると骨形成が促進した事と一致した。さらに蛍光標識したSPを投与した場合でも骨形成期の骨芽細胞にSPの結合が認められた。Tacykinin familyのうちでは10(-7)-10(-6) M SPならびに10(-9)-10(-11) M neurokinin Bで骨形成の増加が認められたが、neurokinin Aでは増加は認められなかった。以上の結果により、SP receptorであるNK_1-Rは初代培養系骨芽細胞の骨形成期に認められることが明らかとなった。また、SP以外のtachykinin FamilyではNKBが骨芽細胞の骨形成を促進することが明らかとなったが、これはantagonistを使った実験によりNK_1-Rを介していることが示唆された。
一方、破骨細胞に関してはヒト末梢血単球を活性型ビタミンD3、M-CSF, RANKL存在下で破骨細胞に分化させる系においてSPの影響を調べた。その結果、10(-8)-10(-10) M SPを加えた時に破骨細胞の形成が促進された。また、ヒト末梢血単球にもNK_1-Rが存在することが免疫染色によって明らかになった。以上の結果により破骨細胞の分化に関しては、SPは破骨細胞の前駆細胞である単球にNK_1-Rを介して直接的に分化を促進していることが示唆された。

研究成果

• [文献書誌] Goto T, Tanaka T: "Tachykinins and tachykinin receptors in bone"Microscopy and Research Technique. (in press).
• [文献書誌] Goto T, Kido MA, Yamaza T, Tanaka T: "Substance P and substance P receptors in bone and gingival tissue"Medical Electron Microscopy. 34. 77-85 (2001)
• [文献書誌] Goto T, Yamaza T, Kido MA, Tanaka T: "Substance P activates osteoclast formation and osteoclastic bone resorption through the neurokinin-1 receptor"Acta Histochemica et Cytochemica. 34. 31-38 (2001)
• [文献書誌] 後藤哲哉: "神経ペプチド、サブスタンスPと骨代謝"歯科基礎医学会雑誌. 42・10. 527-535 (2000)
• [文献書誌] Kido MA, Yamaza T, Goto T, Tanaka T: "Immunocytochemical localization of substance P neurokinin-1 receptors in rat gingival tissue"Cell and Tissue Research. 297. 213-222 (1999)
• [文献書誌] Goto T, Yamaza T, Kido MA, Tanaka T: "Light and electron microscopic study of the distribution of axons containing substance P and the localization of neurokinin-1 receptor in bone"Cell and Tissue Research. 293. 87-93 (1988)