研究概要 |
馬鈴薯澱粉に液化型α-アミラーゼ、グルコアミラーゼ、プルラナーゼを反応させた後、カラムクロマトグラフィーによってリン酸化オリゴ糖(POs)およびその分画品であるPO-2を調製した。これらのオリゴ糖がミュータンスレンサ球菌のう蝕誘発性に関係した諸性質にどのような影響を及ぼすかを調べた。まず、ミュータンスレンサ球菌によるリン酸化オリゴ糖の資化についてStreptococcus mutans MT8148株とStreptococcus sobrinus 6715株の培養系を用いて調べた結果、POsおよびPO-2はS.mutans MT8148株、S.sobrinus 6715株によって資化されず、菌体増殖のためのエネルギー源とならないこと、また、培地のpHも低下させないことが分った。また、S.mutans MT8148株と、S.sobrinus 6715株によるスクロースの発酵に及ぼすPOsの影響を両菌の菌体懸濁を用いた実験系で調べた。20%菌体懸濁液中にスクロースおよび/またはPOsを加え、37℃でインキュベートしながら反応混液のpHを連続的に測定した。S.mutans MT8148株の20%菌体懸濁液に0.684%スクロースを加えると、反応液のpHは5分以内に5.0以下となり、10分でほぼ4.0まで低下した。これに5%または10%のPOs,PO-2を共存させるとpH低下はPOs,PO-2の濃度に依存して抑制された。この濃度依存的なpH低下の抑制はS.sobrinus 6715株においても観察された。さらに、S.sobrinus 6715株の菌体外グルコシルトランスフェラーゼ(GTF)を調製し、GTF活性に及ぼすPOsおよびPO-2の影響を調べた結果、両オリゴ糖ともGTF活性阻害作用を示さなかった。今後さらにミュータンスレンサ球菌のう蝕誘発性に関係した緒性質に及ぼす影響を検討する予定である。
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