研究概要 |
昨年度に引き続きリン酸化オリゴ糖(POs)がミュータンスレンサ球菌のう蝕誘発性に及ぼす影響について検討した。 今年度は主として人工口腔装置を用いて、エナメル歯片上へのバイオフィルム形成量、バイオフィルム直下でのpH値、エナメル脱灰度の三つの要因に及ぼすPOsの影響について、S.mutans, S.sobrinusを用いて検討した。人工口腔装置は、主要部のチャンバー、送液用ペリスタポンプ、温水循環用恒温槽、冷却スターラー、pHレコーダ等から構成されている。主要部のチャンバーは二重管構造になっており周囲のジャケットに温水を還流することにより、チャンバー内部を37℃に維持している。チャンバー下部からはガラス電極を逆さに装着し、電極周囲のホルダーにはエナメル歯片(3.5X3.5X1.0mm) 4個を固定した。チャンバー上部からは菌体懸濁液(OD500=2.0)、スクロース含有HI培地、POs(終濃度1%)溶液等をステンレスチューブを介して6ml/hr/tubeの流速で連続供給した。S.sobrinusの場合、対照(1%スクロース)では滴下開始約5時間で明らかにバイオフィルム形成が始まり、それに伴ってpHが低下しはじめ、約7時間後にpH5.5、18時問後にはpH4.2となった。S.mutansの場合、対照(1%スクロース)では約10時問でpH低下が始まり、約15時問でpH5.5、20時間後にpH4.4となった。対照に終濃度5%のPOsを加えて滴下すると、S.sobrinusでは、当初pH6.2は18時間経ってもほとんど変化せず5.8を推移した。バイオフィルム形成量、脱灰度ともに対照より有意に低下した。5%のPOs存在下のS.mutansでは、当初pH6.0は18時間までほとんど変化せず20時間でやや低下して5.4となった。バイオフィルム形成量、脱灰度ともに対照より有意に低下した。 以上の結果からPOsはスクロースのもつう蝕誘発性を部分的に阻害することが示唆された。
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