研究概要 |
1.小児型低ホスファターゼ症患者で見つかったヒト組織非特異型アルカリホスファターゼ遺伝子変異の解析に基づき[TNSALP(T51M)、TNSALP(R54S),TNSALP(L258P),TNSALP(R374H),TNSALP(A160T),TNSALP(R206W)]についてのその生合成を予備的に検討した(日本医科大学折茂英夫先生との共同研究). 2.周産期(致死)型の低ホスファターゼ症で報告されたTNSALP(N153D)変異が酵素分子に及ぼす影響を細胞生物学的手法を用いて解析した.本変異を有する酵素は全く活性を有せず、しかも高分子量の凝集物を形成していたことから、ミスセンス変異により酵素分子のフォールディングおよび会合の過程が著しく阻害されることが判った.さらに本変異酵素はゴルジ装置のシスに蓄積することが蛍光抗体法を用いて観察された.本変異酵素は細胞表面へは移与せずに最終的には細胞内で分解されるが、その分解速度は小胞体に蓄積するTNSALP(R54C)に比べて遅く、小胞体へ戻った後で分解される可能性が示唆された.従って、本変異酵素を発現する患者(ホモ)では、骨芽細胞の細胞表面から活性を持つ酵素が失われていることが推測された.以上の結果は153番目のアスパラギン残基が酵素の立体構造形成の上で重要であることを示しているが、153番目のアスパラギンを同じく側鎖にアミド基を有するグルタミンに変異させたTNSALP(N153Q)の解析を行ったところ、生合成、細胞での局在、酵素学的なパラメーター、2量体形成などの点で野生型の酵素とほとんど同一の性質を示すことから、153番目のアミノ酸にはアミド基が重要であることを示している.
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