研究概要 |
唾液腺造影用のカテーテルを用いて唾液を直接採取することにより、口腔内の環境(細菌感染など)の影響を極力排除した条件での唾液中NOを測定することが出来た。こうして採取した唾液腺を用いて前年度までに以下に示す結果を得ている。 1 健常者群とシェーグレン症候群患者との間に統計学的に有意の差は認められなかった。この結果より、唾液中NO量が個人においても食事あるいはその他の生理的要因により大きく変動している可能性が考えられた。2 健常成人女性においては、月経周期と唾液中NO量との間には有意な相関が認められなかった。3 次にシェーグレン症候群と類似した口腔乾燥症を呈するHAM(HTLV-1-associated myelopathy)の患者についてその画像所見と口腔乾燥症状とを比較検討した。その結果この患者群に認められる口腔乾燥症は典型的なシェーグレン症候群の其れとは別の機序で発症している可能性が示唆された。(J.Rheumatology 26:2609-14,1999) 平成12年度はさらに、炎症を惹起した唾液腺におけるNOの活性を測る目的で、まず唾石に併発した顎下腺の炎症をMRimagingを用いて解析した。その結果、MRimagingは急性期、慢性期の顎下腺の実質の変化(浮腫や脂肪変性)を良好に捉えることができた。(AJNR20,1737-1743,1999) また、NO産生と深く関連のある脂肪代謝の異常と唾液腺機能異常との相関を調べる目的で高脂血疾患者における唾液分泌機能低下と唾液腺への脂肪沈着との関連についてMRimagingを用いて検討した結果、血中トリグリセロール並びにコレステロールと唾液分泌機能低下との間に高い相関が認められた。(AJR175,829-834,2000)
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