研究概要 |
我々はヒト顎関節症患者の滑液から幾つかの基質特異性の異なるマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP-1,2,3,9)を検出し、これらのMMPsの活型酵素の出現と骨変化との間に相関があることを見い出している。中でもMMP9と3が、変形性顎関節症に至る前の顎関節内障時に活性化され、軟骨破壊の病態が早期に進行している可能性を示唆するデータを得た。これらのデータをin vitroで疑似できるか否かを検討するために、IL-1投与で惹起した関節炎モデルラットを作製し、そこから取り出した滑膜細胞、軟骨細胞が無刺激下に産生するプロテアーゼを解析した。その結果、MMP-2,3,9が産生され、MMP3がMMP9や他のプロテアーゼの活性化を調節している可能性があること、この時MMPのインヒビターであるTIMP活性は低い状態にとどまっていることを見い出した。以上の結果は、顎関節症患者の滑液中に検出される炎症性サイトカイン(IL-1,TNFα)が、MMP9と3の活性化を調節している可能性を示しており、顎関節軟骨破壊のメカニズムに関する重要な知見であると考える。
|