研究概要 |
根尖性歯周炎の難治性・慢性化因子の1つと推察される根管内外の残存細菌の定着・増殖における細菌バイオフィルムの関与について解明するため,以下の実験を行った。歯根端切除術により切除された根尖部歯牙断片や抜去歯,あるいはX線的に根尖病変部に逸出した過剰根管充填剤(ガッタパーチャポイント:GP)を対象とし,得られた試料を走査型電子顕微鏡にて微細形態学的に検索した。被験5試料中4試料の根尖孔外に,グリコカリックス様のフィルム上の外被に関連して細菌が観察された。根尖孔外に逸出したGP断片試料では,フィルム状の外被内から糸状菌やラセン菌の遊出(矢印)がみられた。根尖孔外突出部のGP表面には糸状菌が優位に存在していた。抜去歯上では,根尖孔外の凹窩周辺に露出したセメント質表層に,多数の細菌が凝集しバイオフィルムを形成していた。抜去歯試料の根尖部孔外においても球状菌が優位にみられ,その他長・短桿菌が散在性に観察された。しかしながら,いずれの試料においても糸状菌はあまり観察されなかった。抜去歯の根尖孔外で観察された細菌は,副根管や根管治療により除去できずに残存した細菌がバイオフィルムを形成し,生体防御の影響をあまり受けずに根尖孔外に侵入したのではないかと推察される。また,不適切な根管充填がなされた場合,根管内に残存した細菌や新たに歯冠部から侵入した細菌がバイオフィルムを形成し,GPを感染経路として根尖孔外に侵入し,根尖性歯周炎を慢性化・難治化する可能性が示唆された。一方,ヒトの重度成人性歯周炎罹冠抜去歯上で,免疫走査電顕法にてバイオフィルム形成細菌を検索し,歯周ポケット底部に位置するいわゆプラークフリーゾーンにおいて,バイオフィルムを形成したPorphyromon as gingivalis および Actinomyces viscosusを検出した。
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