研究概要 |
咀嚼・咬合機能の改善,回復が全身状態,特に生体調節系(神経系,内分泌,免疫系)に及ぼす影響を明らかにすることを目的として,咬合の異常を訴える患者について検討した.被検者群の設定は,咬合の異常を訴える患者群(種々の歯の欠損形態を有するもの)および健常な対照群とし,各被検者は,歯の欠損形態,顎口腔機能の状態に応じて群分けし,治療前後,ならびにその後の経過観察から経時的に追跡することとした. I.口腔内状況の評価項目は,1)咀嚼機能評価として残存歯数,2)使用中の義歯評価,3)咀嚼能率の測定,4)摂取可能食品,5)口腔メインテナンス状態の評価,6)咀嚼時の咀嚼筋筋電図と下顎運動経路の同時記録結果の評価,7)咬合力・咬合接触面積の評価とした.義歯評価法と摂取可能食品の評価法については,独自のプロトコールに従って患者のアンケート調査と術者による診査を行い,両者の比較から,客観的評価方法として有効であることを確認した. II.全身状態の評価は,1)血液学的検査として,RBC,WBC,Hb,Ht,白血球像,2)免疫学的検査として,CD4・CD8比,NK細胞活性,リンパ球幼若化反応(PHA,CONA),3)自律神経系検査として血圧(収縮期,拡張期)、安静時全唾液量,唾液蛋白濃度,4)内分泌系検査として,血漿ホルモン(ACTH,アドレナリン,ノルアドレナリン)の濃度,5)全身状態検査として,ADL評価,6)精神心理的評価:各種心理テストによる不安,抑鬱尺度の評価とした. 今後は,この実験プロトコールに従って,とくに咀嚼機能の改善や安定した咀嚼機能の喪失が生体調節系に及ぼす影響と,3つの調節系の相互作用に対する影響を明らかにするために,咀嚼機能改善後の経時的変化の検査・記録結果の分析を行う.さらに,咬合に起因する顎関節症患者について同様の前向きコホート研究にて症型別に資料を収集し,咬合異常がストレッサーとしての作用を持つかどうかを検索する予定である.
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