研究概要 |
高齢無歯顎患者は義歯装着により咀嚼機能が改善されるばかりでなく,日常生活の活動能力(ADL)が向上し,身体的,精神的,社会的にも健康になると考えられる.しかし,これら咀嚼機能の向上とQOLとの関連について検討を試みた報告は見当たらない.本研究は65歳以上の高齢無歯顎患者の咀嚼機能回復とQOLの関係について明らかにすることを目的としている. 平成11年度は以下の研究を行った. 1.咀嚼機能を評価する方法として,義歯機能時に発揮される咬合力に着目し,65歳以上の無歯顎患者63名を対象として,最大咬みしめ時の筋電図積分値の測定を行い,平均咬合力値を算出した.その結果,65歳以上の推定平均最大咬合力値は男性(31名)が19.3kgf.女性(32名)が17.7kgfであった. 2.義歯装着による咀嚼機能の回復がQOLの向上に寄与していることを解明する前段階として,咀嚼機能の回復程度が患者の満足度にどのような影響を及ぼすかについて検討を行った.咀嚼機能は咬合力と咀嚼効率から評価し,満足度はVASを用いた.測定は義歯装着直後から2ヶ月後まで経時的に行った.その結果,咬合力や咀嚼効率による評価法は患者の主観的評価を反映していることが確認された. 3.高齢無歯顎患者を対象に,社会的,機能的要因によって構成された意識モデルを作成し,そのモデルに対応した義歯における質問紙票を作成した.現在約30名データを採得し,ファイル化を行っている.今後,要因相互の関連性について分析していく予定である.
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