研究概要 |
本研究は高齢無歯顎患者を対象に,咀嚼機能の回復がQOLに及ぼす影響について検討することを目的として企画したもので,4項目について検討を行い,以下の結果を得た. 1.高齢無歯顎患者の平均最大咬合力値と平均力積値の算出 65歳以上の無歯顎患者63名を対象に,平均最大咬合力値と平均力積値を算出した.その結果,平均最大咬合力値は男性(31名)が19.3kgf,女性(32名)が17.7kgfであった.平均力積値は男性が3.9kgf/s,女性が3.7kgf/sであった. 2.QOL質問紙の作成 QOLの向上に関わると思われる,義歯に関する不満や症状,原因,社会要因まで含めた質問紙を作成し,無歯顎患者81名に対してアンケート調査を行った.得られた結果に対して因子分析を行い,患者の義歯に対する不満を構築する要因を「機能」,「会話」,「審美」,「活動・心理」の4尺度に分類した.さらに各尺度ごとに内的整合性を検討して,最終的に4項目27質問から構成される質問紙,を作成した. 3.咀嚼機能の向上がQOLに及ぼす影響 高齢無歯顎患者における咀嚼機能の回復が,QOLに及ぼす影響について検討した.測定は旧義歯使用時と新義歯装着時,調整終了時,装着3ヶ月後,装着6ヶ月後の計5回行った.その結果,咀噛機能の向上に伴い,QOLは向上することが示された.さらに咀嚼機能が向上し,それを長期間維持することにより,患者の活動性や心理面におけるQOLは向上することが示された 4.3次元咬合力と咀嚼機能,QOLとの関係 高齢無歯顎患者の咬みしめ時に発現される咬合力の大きさや作用方向が,咀嚼機能の回復やQOに及ぼす影響について検討した.その結果,新義歯を装着することにより咀嚼機能とQOLは向し,咬合力も大きくなったが,咬合力の作用方向は旧義歯使用時と新義歯調整終了時で差は認められなかった.
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