研究概要 |
臼歯咬合面修復用のコンポジットレジンは口腔内での耐摩耗性の観点から、粉砕微粒子の高密度充填タイプとマイクロフィラー充填型のいずれが優れているかの臨床的結論は未だ出ていない。本年度は、谷が先に提唱したグラスビーズ摩耗試験法による臼歯用コンポジットレジンの耐摩耗性の評価を行った結果、表面処理を施していないグラスビーズ(GB,東芝バロテイーニ)を滑走材に用いた場合は、摩耗量(容積減量)がクリアフィルAP-Xや、Z250のような高密度充填型が28.35Cm X10であり、シラックス・プラスやメタフィルCのようなマイクロフィラー配合型がそれぞれ14.98Cm X10,7.57Cm X10と耐摩耗性に優れており、次いでサブミクロンサイズフィラーのパルフィークエステライトは16.09Cm X10が優れていた。一方、グラスビーズGBを予めシランカップリング剤で表面処理した粒子(EGB、東芝バロテイーニ)を使用した場合は、却って、表面処理していないGBの役2〜3倍の摩耗性を示した。これはGBが表面未処理で親水性を示し、試験機中に沈澱する傾向があり、PMMA滑走面上にグラスビーズの分布が不均一になった可能性があるのに対し、EGBは揆水性があり、グラスビーズのサスペンションが均一に分散し、滑走面上にも多量に分布したものと考えられ、耐摩耗性評価としてはむしろ表面処理したEGBを使用すべきではないかと考察された。このグラスビーズ摩耗試験法は臼歯咬合面における摩耗は前歯における摩耗とは異なり、対合歯との強い加圧接触による咬耗が主役になると考え、このような臼歯部における特殊な機械的環境をin vitroに評価しようと試み、谷らが考案した新しい対摩耗性試験法である。本法は、アクリル板滑走面上に平均40umのグラスビーズのスラリーを敷き、その上を400gの荷重を掛けて試験片を往復滑走させ、1ストローク10cmであるので10,000回の往復で2,000mを滑走したことになる。尚、このグラスビーズの物性はエナメル質表面と極めて近似しているものを選んだ。
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