研究概要 |
研究者らは、ウサギのオトガイ神経を頻度5Hz,強度5〜20mAで電気刺激すると,交感神経活動の減少により,血圧においては約40%の低下,心拍数においては約10%の減少が惹起されることを確認した.今回,GABA系薬剤の静脈内投与が,これらの循環抑制に対しどのような影響を与えるか検討した.使用した薬剤は,ムシモール(GABAA作動薬),ピクロトキシン(GABAA遮断薬),バクロフェン(GABAB作動薬),ファクロフェン(GABAB遮断薬)とした. ムシモール1mg/kgの投与では,オトガイ神経刺激による循環抑制はほとんど影響を受けなかった.投与量を増加させるにつれ刺激による循環抑制の程度は小さくなった.ピクロトキシン2mg/kgの投与では,オトガイ神経刺激による血圧低下の程度は小さくなったが,心拍数の減少の程度は逆に大きくなった.投与量を増加させると,刺激による血圧の低下の程度はさらに小さくなったが,心拍数の反応性については著変はなかった.バクロフェン3mg/kgの投与では,オトガイ神経刺激による循環抑制はほとんど影響を受けなかった.投与量を増加させると,刺激による血圧の低下や心拍数の減少は惹起されなくなり,逆に血圧の上昇,心拍数の増加が認められた.ファクロフェン1mg/kg投与では,オトガイ神経刺激による循環抑制はほとんど影響を受けなかったが,投与量を増加させると反応性が低下した.このように,GABA系薬剤の全身投与により,オトガイ神経刺激による循環抑制は,種々の影響を受けることが明らかとなった. 来年度以降は,これらの機序を,自律神経活動の検討あるいは脳幹での刺激伝導の経路の検討を通して,解明していく予定である.
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