研究概要 |
研究者らは,ウサギの三叉神経末梢を頻度5Hz,強度5〜20mAで電気刺激すると,交感神経活動の減少により,血圧においては約40%の低下,心拍数においては約10%の減少が惹起されることを確認した.今回,三叉神経に加えられた刺激が,どのような経路によって交感神経系に影響を与えているか延髄レベルで検討した. 実験には日本白色家兎を用い,ウレタン,α-クロラロース,ガラミンを投与し,気管切開した後,人工呼吸下で実験を行った.三叉神経刺激には眼窩下神経を用いた.ウサギを定位固定装置に固定後,延髄を露出させた. まず,延髄を三叉神経脊髄路核が存在するとされる部位,すなわちカンヌキより尾側2mm,側縁から内側2mmの部位をメスで破壊した後,眼窩下神経を頻度5Hz,強度20mAで10秒間刺激したところ,破壊前に認められた眼窩下神経電気刺激による血圧低下と徐脈は認められなくなった.さらに,先端の直径0.25mm,露出部の長さ0.25mmの電極を用い,同部を60度で1分間加熱した後,眼窩下神経を刺激したところ,血圧低下や徐脈は認めらたものの,その程度は破壊前の眼窩下神経による変動より小さくなった. さらに,循環動態の調節に関与するとされるventrolateral medullaやrostral medullary rapheを同様に破壊したが,破壊そのものによる循環動態の変動が大きく,これらの部位が三叉神経刺激の経路であるか否かについての評価はできなかった. 来年度は破壊条件を様々に変化させるとともに,さらに組織学的検索を含めた,破壊部位の詳細な検討を行う予定である.また破壊実験に加え,各種薬剤の局所投与の影響も検討する.
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