研究概要 |
頭頚部扁平上皮癌患者の治療に際しては二次癌の発生の可能性を考慮することが重要である。申請者らは、同時性、異時性を含めた口腔多重病変を有する患者の癌組織、前癌病変の組織を用いて染色体上の3p14、9p21、17p13領域における変異(microsatellite instability, loss of heterozygosity)を検討し、field cancerlzation theoryを分子生物学的に証明することを試みた。その結果、1)大部分の口腔多発前癌病変はそれぞれ独立に発生しており、field cancerization theoryを裏付ける結果が得られた。2)口腔多発癌ではfield cancerization theoryを裏付ける発癌に加え、common clonal originのものも存在する可能性が示唆された。3)3p14、9p21、17p13領域でのmicrosatelliteの変化は病変の進展に伴い蓄積される傾向を示した。また動物実験においてもp53遺伝子の異常を指標にDMBA誘発多発頬粘膜癌のclonalityについて検討し、multidonalに発癌しておりfield cancerization theoryのモデルとして有用であることが示唆された。今回新たに前癌病変169例についてp53遺伝子変異の検索を行い、白板症で8/115(7%)、扁平苔癬で3/22(14%)、粘膜下線維症で2/32(6%)に異常を認めた(第5回国際癌予防シンポジウム(Geneve)にて分表)。p53遺伝子に異常を認めた症例は今後経過を観察し、悪性化の有無を確認する。また、特に粘膜下線維症は口腔粘膜全体が侵される病変であり、field cancerization theoryを考慮した治療法の開発、また、発癌した際の二次癌の予防対策が必要である。
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