血管新生は腫瘍の増殖から転移の過程において現在最も注目されている事象の一つである。腫瘍血管が豊富なほど腫瘍細胞は血中に入りやすく、血管新生能の強い腫瘍ほど標的臓器の微小環境において腫瘍血管を誘導し転移巣を形成しやすいと考えられる。腫瘍血管新生において最も重要視されている因子がvascular endothelial growth factor (VEGF)であり、VEGFの腫瘍細胞における発現と血管新生の亢進との間に正の相関が様々な腫瘍で認められている。本研究では口腔癌における腫瘍血管新生とリンパ節転移、遠隔転移との関係、腫瘍血管新生と血中腫瘍細胞との関係、を臨床、免疫組織化学及び分子生物学的に検討し下記の結果を得た。 腫瘍血管新生を腫瘍周囲の微小血管密度(MVD)と腫瘍によるVEGF発現をみることでの評価し頚部リンパ節転移との関連性を検討した結果、血管密度、VEGF発現とリンパ節転移とには強い関連性を認めこれらを検索することでリンパ節転移を予測することが可能と考えられた。しかし遠隔転移については43例中5例、12%に認めたのみであり関連性を検討することは困難であった。血管密度と血中腫瘍細胞との関連性をみると血管密度が高くなるにつれて血中腫瘍細胞の検出率も高くなることから、血管新生の増加に伴って腫瘍の血管侵襲が強まり血中腫瘍細胞数の増加につながるものと考えられた。リンパ節転移と血中腫瘍細胞検出との関連性をみるとリンパ節転移陽性例に血中腫瘍細胞陽性が陰性と比較して有意に高かった。このことは口腔扁平上皮癌のリンパ節転移が血行転移(遠隔転移)のfirst stepであることを示している。
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