研究概要 |
11年度は in vitro と in vivo での浸潤モデルにおける浸潤増殖像の検討および in vivo では浸潤モデルにおける浸潤と転移との関係についてそれぞれ検討した。その結果、コラーゲンゲルを用いた in vitro 浸潤モデルにおいて細胞の浸潤能に応じた浸潤像を再現することに成功し、浸潤様式が高度になるにつれゲル中へのび慢性の浸潤を認めた。またこれらの細胞の運動能、基質分解能、接着能を免疫組織化学的に検討した結果、運動能では浸潤能の高い細胞で浸潤時に自己分泌型の運動促進因子(autocrine motility factor;AMF)の高い発現を観察した。基質分解能では各種のマトリックスメタロプロテナーゼ(MMP)を検討したところ浸潤能の高い細胞でMMP-1,MMP-2,MMP-9の過剰発現を認めた。接着能では細胞間接着分子であるカドヘリンおよびデスモグレインについて検索したところ、浸潤脳の低い細胞の浸潤像では細胞間接着が強固に観察されたが、浸潤能の高い細胞の浸潤像では両者の接着分子はいずれも高度に消失していた。以上より口腔扁平上皮癌の浸潤像の形成には運動能、基質分解能、接着能が密接に関係していることが示唆された。そこで、同じ癌細胞をヌードマウスの口腔内に移植した正所性移植モデルにおける浸潤像を検討したところ細胞の浸潤能に応じた類似の組織像を再現することが確認された。また、高度浸潤像を示す細胞ではほぼ100%のマウスに頸部リンパ節転移を認めた。現在は上記と同じ抗体を用いて免疫組織学的に、腫瘍の運動能、基質分解酵素、接着能の検索を行っている。
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