研究概要 |
12年度はin vitroおよびin vivoでの各浸潤モデルにおける浸潤増殖像の検討およびin vivoでは浸潤モデルにおける浸潤と転移との関係についてそれぞれ検討した。その結果、コラーゲンゲルを用いたin vitro浸潤モデルにおいて各癌細胞の浸潤能に応じた浸潤像を再現することに成功し、浸潤様式が高度になるにつれゲル中へのび漫性の浸潤を認めた。また、浸潤様式4D型の癌細胞ではコラーゲンゲル中に繊維芽細胞を入れない状態でも、同様にび慢性の浸潤を認めた。これらの細胞の運動能を検討した結果、浸潤能の高い細胞で浸潤時に自己分泌型の運動促進因子(autocrine motility factor;AMF)の高い発現を観察し、高浸潤細胞では繊維芽細胞に頼らず自ら産生する運動因子で浸潤する能力があることが証明された。基質分解能では各種のマトリックスメタロプロテナーゼ(MMP)を検討したところ浸潤能の高い細胞でMMP-2,MMP-9,MT1-MMPの過剰発現を認めた。接着能では細胞間接着分子であるカドヘリンおよびデスモグレインについて検索したところ、浸潤能の低い細胞の浸潤像では細胞間接着が強固に観察されたが、浸潤能の高い細胞の浸潤像では両者の接着分子はいずれも高度に消失していた。以上より口腔扁平上皮癌の浸潤像の形成には運動能、基質分解能、接着能が密接に関係していることが示唆された。そこで、同じ癌細胞をヌードマウスの口腔内に移植した正所性移植モデルにおける転移能を検討したところ、高度浸潤像を示す細胞ではほぼ100%のマウスに頚部リンパ節転移を認めた。また、in vivoにおいても、潤像の形成には運動能、基質分解能、接着能が密接に関係していることが示唆され,in vitroと同様の所見を得た。現在はin situ zymographyを行い、浸潤時に観察されるゼラチナーゼの活性について検討を行っている。
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