研究課題/領域番号 |
11470433
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
水谷 英樹 名古屋大学, 医学部, 助教授 (30167663)
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研究分担者 |
畠 賢一郎 名古屋大学, 医学部, 助教授 (80293710)
各務 秀明 名古屋大学, 医学部, 講師 (80242866)
上田 実 名古屋大学, 医学部, 教授 (00151803)
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キーワード | 顎関節 / 癒着 / 培養 / 電顕 / 蛍光染色 / アクチン |
研究概要 |
顎関節内癒着病変の発生機序を解明する目的で顎関節症癒着病変(band-like adhesion[BA]、pseudowall-like adhesion[PW])の形態学的特性を検討した.実験には生体外で拘縮現象を観察できる、コラーゲンゲル収縮モデルを用いた.ヒト正常皮膚(NS)線維芽細胞、歯肉線維(GF)芽細胞、関節円板(D)由来、滑膜(S)由来および癒着病変由来細胞との比較を試みた.ゲル収縮の経時的観察では、NS、PW、BA、D=GF、Sの順にゲル収縮が強く起こった.顎関節由来ではPWが一番強い収縮を示し、癒着病変由来細胞の活性の高さ(細胞の増殖能力、遊走活性、サイトカインの産生能、反応力、細胞外基質産生能)を反映していることが示唆された.透過型、走査型電子顕微鏡所見、アクチン蛍光染色から、癒着病変由来細胞の中でBAは、滑膜A細胞類似のマクロファージ様細胞、PWは線維芽細胞様細胞として観察された.BAは細胞密度は低く、PWは高く、両細胞ともに比較的太い細胞突起を有する細胞が認められた.BAはコラーゲン束の走行は整然としており、癒着病変の進展方向と一致していた.PWのコラーゲン束は癒着の方向と関連なく、ランダムに走行していた.PWの一部には、石灰化したコラーゲン細線維が観察された.BA、PW供にアクチンフィラメントは細胞膜直下、細胞突起内、細胞辺縁でよく発達していたが、PWはBAと比較して細胞1個あたりのアクチンフィラメントの数が多く認められた.上記の形態学的観察所見はPWがBAより癒着が高度である臨床所見との関連を示唆していた.癒着病変由来培養細胞の形態変化に及ぼす薬剤の影響の検討を調べる目的で、添加薬剤としてトラニラストを選択した.ゲル収縮のトラニラスト添加群では、特に顎関節癒着病変由来細胞で有意差を持った収縮抑制効果が認められた(P<0.05>.形態学的観察所見でも、トラニラスト添加群では、細胞突起、マイクロフィラメントの数、長さの減少が認められた.BAとPWの間でトラニラストの反応に差があり、PWよりBAの方に反応効果が高かった.この違いの理由は明らかではないが、トラニラストレセプターの発現の差、サイトカインへの反応の差を反映していることが示唆された.
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