研究概要 |
我々が考案したアルジネート膜がGBR法における細胞遮断膜として機能することはすでに判明しているが,膜作成に必要な塩化カルシウムやアルキン酸ナトリウムの至適濃度については不明である.そこで本研究の目的は,膜作成に必要な各溶液の至適濃度を細胞遮断膜としての機能や治癒の面から検討することである. まず各溶液の濃度が,形成されるアルギン酸カルシウム膜の厚さに及ぼす影響を検討した.その結果,アルギン酸ナトリウムの濃度が上昇するにつれ膜厚は増した.またアルギン酸ナトリウムの濃度が1%以下では塩化カルシウムの濃度にかかわらずほぼ同じ厚みであり,それ以上の濃度では塩化カルシウム濃度が高くなるにつれ膜は厚くなる傾向を示した.そこで塩酸カルシウム濃度は3%,アルギン酸ナトリウムは0.5%,1.0%,1.5%を用い,厚さの異なる3種類の膜を作成し動物実験に供した. 実験動物はラット脛骨に骨欠損を形成し,同骨欠損部に各濃度のアルジネート膜を形成し,1,2,4,8週後の組織標本から骨形成能を検討した.その結果,対照群では骨断端部から早期に新生骨の形成が認められたが,骨欠損部に結合組織が侵入し骨は2つに分かれて治癒した.一方実験群において,1,2週ではアルギン酸ナトリウムの濃度に関わらずアルジネート膜が骨欠損部への結合組織の侵入を防御してしており,8週目では骨欠損部はもとの形態近くまで回復していた.しかし対照に比べ実験群では治癒は遅延していた.またアルギン酸ナトリウムの濃度により形成されたアルジネート膜の吸収速度に違いが認められ,そのため高濃度では膜の吸収が遅れ残存している膜の下までしか骨の修復は起こっておらずわずかにくびれた形態で回復していた. 以上のことより,GBR膜として膜の強度を得るにはアルギン酸ナトリウムの濃度を高くした方がよいが,その場合逆に膜の吸収が遅くなり残存膜部に骨が新生せずに治癒した.
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