研究概要 |
前年度の研究結果より,骨欠損部にアルギン酸ナトリウム水溶液(Ag-Na)を充満させた後,塩化カルシウム水溶液(Ca)を滴下して作製した(直接法))アルジネート膜は適切な溶液濃度で生体親和性に優れた吸収性GBR膜として機能することをを証明した.さらにアルジネート膜は自己硬化性があるばかりでなく,柔軟性を有している.そこで現在用いられているGBR膜の欠点である辺縁封鎖性に関して,アルジネート膜を用いれば複雑な表面形態の骨欠損部表面を緊密に封鎖できる可能性があると考え,アルジネート膜をあらかじめ作製し既製のGBR膜として骨欠損部を被覆し(間接法),GBR膜としての有用性について検討を加えた. 実験は,Ag-NaにCaを噴霧して作製したアルジネート膜でラット脛骨に形成した骨欠損部を被覆し両端を3-0絹糸で固定した.濃度は前年の直接法と同様にAg-Na:1.0% Ca3.0%(A群),Ag-Na:3.0% Ca:3.0%(B群),Ag-Na:3.0#Ca:10%(C群)とし,経時的に組織学的に検討を行った. その結果,A群では作製したアルジネート膜の強度が弱く操作性が不良であったため実際に骨欠損部への埋入は行なえなかった.(2週目)溶液の濃度にかかわらず周囲組織に接している筋側においては,アルジネート膜が骨欠損部表面に存在していたが,皮膚側ではアルジネート膜が欠損内部に陥没し結合組織の嵌入を認めた.(4週目)溶液の濃度にかかわらず,筋側ではアルジネート膜に沿って新生骨の形成が認められたが,皮膚側では結合性組織が嵌入し骨髄の部分が肉芽様の変性を起こしていた.(8週目)溶液の濃度にかかわらず,筋側では骨のリモデリングにより骨新生が起こっていたが,皮膚側では骨欠損部内に結合性組織が存在しそれにより骨再生は認められなかった. 以上の結果より,アルジネート膜を間接法によって使用した場合,即製の吸収性細胞遮断膜と同様に強度的に問題があり,GBR膜として用いることは困難であることが判明した.
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