研究概要 |
GBR法として用いられている即製の細胞遮断膜の欠点である不完全な辺縁封鎖性を改善するために,われわれは直接骨面に膜を作ることが出来るアルジネート膜を考案し,in vivoにおいて細胞遮断膜として機能していることを示した.本研究において,この膜を作製するのに用いるアルギン酸ナトリウムと塩化カルシウムの至適濃度について検討を行なった.細胞遮断膜として結合組織の骨内への侵入を防ぐためにはある程度の膜厚と強度が必要と考え各溶液の濃度を上げて膜を作製したところ膜厚は厚くなったが膜の吸収が遅れその残存膜のために骨の再生も遅延した.このことはこのアルジネート膜の特性である吸収性膜としての機能をしておらず適切な濃度ではなかった. さらに骨欠損部を満たしているアルギン酸ナトリウムが吸収されずに骨再生を遅延させている結果を得たのでこのアルジネート膜を既製膜として,すなわち前もってアルジネート膜を作製して,使用し骨再生の状態を検討した.その結果従来の吸収性膜と同様に強度的に問題があり膜の裏打ちのない部位(皮膚側)では膜が破れ結合組織の侵入が認められた.一方筋により膜の裏打ちのある部位(筋側)では骨の再生が認められたが,骨再生の期間には明らかな短縮は認められなかった. そこで骨再生の期間を短縮させるためにアルジネート膜に骨伝導性を付与した.すなわちアルギン酸ナトリウムにリン酸を含有させアルジネート膜を作製した.しかし動物実験では,対象と比較して有意に骨再生の短縮は得られなかった.逆に術野の感染が多くに起こったことよりリン酸が起炎物質として作用していたと考える. 以上の結果より,アルジネート膜が吸収性の細胞遮断膜と作用するためにはアルギン酸ナトリウム1.0%,塩化カルシウム3.0%が至適濃度であった.骨再生の期間を短縮するためアルジネート膜にリン酸を含有させたが効果は得られなかった.
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