研究概要 |
嚥下反射と呼吸機能の相互作用に及ぼす中枢神経・筋活動性の検討を行うために,初年度で明らかになった問題点を考慮し,次年度は以下の実験機器の設置・調整を行い,関連する予備実験を行った. 初年度(平成11年度)は人の上気道の呼吸抵抗などを詳細に検討するために,ポリグラフに圧,流量,積分ユニットなどを設置し,終末呼気に陽圧を負荷できる装置を併用して3〜5ポイントの測定値を得て,圧-流用曲線を解析するシステムを設定した.このシステムを用いて上気道の抵抗値は回帰直線の傾きから算出できたが,臨界圧に関して測定上の問題点が明らかになった.すなわち正常時では,人の上気道の臨界圧は負の値を示すことが多いため,陽圧負荷だけのシステムでは検出できない可能性があり解析の範囲を広げる必要が生じた.そこで次年度(平成12年度)では陽圧を負荷できるシステムに加えて,陰圧を与える機器を新たに設置し,-10mmHgから+30mmHgの広範囲で圧流量曲線を解析できる発展的な機器を整備できた.この結果,正常時臨界圧(-2mmHg〜-5mmHg)を含めて,広範囲な解析から,より正確な上気道機能変化を検討することができるようになった. また,呼吸補助筋の働きを鼻翼筋,オトガイ舌筋などに刺入した針電極から筋電図を導出し,呼吸の各位相との関連を検討した結果からは,嚥下反射と呼吸機能の円滑な相互作用の調節には,口腔の筋の緊張度,開口度などが重要な役割を演じている可能性が明らかになってきた. 以上のように次年度(平成12年度)は,主に測定システムの改良ならびに各鎮静法での予備実験を通しての測定精度の確認を終えることができ,いくつかの興味深い結果が得られた.最終年度は完成された測定機器を用いて,いくつかの低濃度麻酔薬を用いた鎮静法中の上気道の機能的変化を測定し,さらに歯科治療中の体位,開口器の影響などについて検討する予定である.また,得られた結果について,麻酔ネコなどの動物実験のシュミレーション実験から、各病態における発生メカニズムを検討し、治療方法などの開発につなげる予定である。
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